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米景気対策を巡る実情

公開日: : 最終更新日:2013/03/06 外交ヨミ

 年金による日経平均の買い支えという「とんだ茶番劇」が続いています。この買い支えはダウでも行われているのですが、週末のダウの高値も6日の日経平均の高値に呼応する位置まで上昇しました。

 CME225先物は日経平均より上昇していますが、ダウの8300ドル近辺は6日の日経平均高値付近である8180円くらいに該当します。

 さて、日本でも米国でもずっと「期待されてきた(と言われているだけ)」景気対策法案ですが(それで株が買われていた)、当初言われていた内容よりも大きく後退して成立に向かっています。

 下院では通すのはなんともありませんが、上院では共和党の反対が根強いので、共和党の党是である「減税」というオプションに資金を振り直す形で通ることになるようです。減額された7800億ドルの妥協案は42%が減税で、残りの58%が財政支出となっていると報道されています。

 市場では景気対策を期待していたので、好感してきたわけですが、これらの対策は全く効果のないものです。それを「期待」と歪曲報道することで市場を作っており、年金資金を使って、そういう印象を深めてきたのが実情です

 それに、この景気対策資金はどこから出るのでしょうか?
 そういったことを、日本の証券マスコミは完全に無視して報道しています。

 増税というオプションが使えない以上は、税金から賄うことは出来ません。よって、国債で賄うことになるわけですが、もうこれ以上は買えない水準にある中国には期待できません。そもそも論として、誰が「金融危機下で米国債なんて買うんだ」という話もあります。

 ヒラリー・クリントンが米国務長官が16-18日に中国より先に日本へ来日します。これは、12日の米国30年債が不調に終わった時に次の米国債発行では「日本おまえが買え」と圧力をかける為です。日本は米国債をここのところ売っているので、「ふざけんなよ」と言いにくるわけです。

 まったく効果のない対策と、その資金源にすら困窮するアメリカという2つの問題が全く議論されずに、「期待期待期待!!!」と大騒ぎする証券マスコミと年金買いに、将来の日本の衰退が見えるようです。

 さて、これとは別にオバマ政権と米金融機関との確執が深まっています

 昨晩のダウの上げ要因として、バンカメのCEOが「政府からの追加支援は不要。国有化は想定していない。」と言ったことが好感されたと報道されていますが、本当はそういう問題ではありません。

 ゴールドマン・サックスが「バッドバンク構想」に反旗を翻して、「公的資金を返済する」と騒いでいることとも関係があるのですが、金融機関の為にならない景気対策ばかり出してくるオバマ政権に対して、金融機関が反発しているというのが実情なのです。

 1年ほど前から書いていることを再度載せますが、現在の不良債権は2種類あります。

 ・オンバランス(簿内) : 商業銀行や投資銀行の目に見える不良債権
 ・オフバランス(簿外) : 投資銀行やヘッジファンドが投資目的に設立したSPC(特別目的会社)の不良債権

 通常言われている、サブプライムローンによる損失額というのは、上記の「オンバランス(簿内)」のものだけです。ですが、本当に問題視されているのは「オフバランス(簿外)」のもので、この額は1000兆円以上であり、場合によっては3000兆円にまで膨らんでいる可能性があります。

 今の金融危機は、この「オフバランス(簿外)」のものに対策しなくてはならないのですが、オバマ政権は「オンバランス(簿内)」のものに対してのみ言及し、かつなんの解決にもならない「公的資金注入」や「バッドバンク」などという対策案をだして、逆に金融機関を追い込んでいる兆しがあります

 ゴールドマン・サックスは、これに対して以下のスキームを提案しています。

 (1) 政府がSPC救済の為にノンリコースローンを出す
 (2) それによりSPCの財務諸表を良く見せる
 (3) その上で、不良債権(オンバランス)を抱えている商業銀行や投資銀行が第三者増資を行う
 (4) その増資をSPCが引き受ける

 「オフバランス(簿外)」の不良債権に対してはなんの効果もありませんが、まだ「公的資金注入」や「バッドバンク」よりかは健全であるとゴールドマン・サックスはオバマ政権に反発しています。確かに、SPCの財務諸表を良くする方が、この先のことを考えれば優先事項です。

 ゴールドマン・サックスが公的資金を返済すると騒いだのも、こういった政府との確執から起きていることです。

 さて、ではなんでこういった事態にまで発展してしまっているのでしょうか?

 それは、4月に国際会計基準を導入するための決断をしなくてはならないからです。
 これについては、すでに1年ほど前に触れていますが、今の米国会計基準というのは、上記のSPC(特別目的会社)を連結しなくて良い「大甘決算」なのです

 ですが、国際会計基準ではこれが許されません。
 よって、4/2に行われる「金融サミット」までに、なんとかして本当の問題があるSPC(オフバランス)の財務を立て直さなくてはならないのです。それを行わない限りは「金融危機」は一切問題解決しないのです。

 逆に言えば、景気対策で使われる資金をSPCの救済の為に使うのが、現状ではベストということになります。もちろん、SPC救済の為には、そのとんでもなく巨額の損失額を公表しなくてはならなくなります。これが公表されれば、一段のショックとなるわけですが、逆にその救済に着手されなければ、ますますこの問題は深刻となり、SPCの巨額の損失が炸裂した時に大問題となるのを待つばかりです。

 でも、どっちが良いのかという話になれば、SPCの救済でしょう。ゴールドマン・サックスの提案スキームも、これを理由に提案されたものです。そして、それは4月までには着手しなければならないことでもあるのです。(現状では全く着手されていません)

 こう見ると、オバマ政権の景気対策期待ばかりにのみ目が行っているように報道されているのが、全くの嘘であり、事態は良くなっていないばかりか、余計悪くなっているのが目に見えてきます。

 トレーダー諸氏はこういった実情をきちんと察知して、チャートや証券マスコミの報道に流されないようにしなければなりません。

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